NO END SUMMER

NO END SUMMER

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加藤和彦

2017-07-22

時代の先を軽やかに渡り歩く粋人なイメージを纏う彼、その突然の訃報(2009年没)に、唯一無二の才を惜しむ声が多く聞かれた。このアルバムは、サディスティック・ミカ・バンド解散後にリリースした2枚目のソロ作(通算4作目)にあたる。黒を基調に、原色をまぶしたジャケット。バンド仲間だった高橋幸宏、後藤次利の信頼できるリズム陣に、鈴木茂、坂本龍一、渡辺香津美らを配したシルクの如きアンサンブル。ブラジルの色彩にうっすらヨーロピアンな香り漂う高品質の楽曲。軽味と気品に溢れる安井かずみの詞。そのすべてにおいて、彼の卓越したセンスとこだわりが満ちている。まるで末長く愛されることを約束されたアンティークのように…。
タイトル曲A①は、ゆるやかな入りからサビへの展開が堪らなくスリリング。笠井紀美子のウィスパリング・ヴォイスと次第に速度を増すブラジリアン・グルーヴがダブルで迫ってくる。加藤のアコースティック・ギターが刻んでいるさり気ないリズムも心憎い。再び笠井とのデュエットで耳をくすぐるA②は、ボサとメロウ・グルーヴが溶け合う極上品。そこにA③が、軽やかで甘いヴァイブレイションを送り込んでくる。このボサ3連発で身体は快感の渦に呑まれ、心はすっかり雲の上。このあともグルーヴィーなジャズからストレートなボサ、ラストのサンバまで様々な嗜好が用意され、我々が耳を逸らすことを許してはくれない。心地よいサウンドに酔いしれる歓喜のカーニヴァルは、いつまでも続いていく。 (波多野寛昭)

& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◯A⑤ Spicy Girl / ◯B③ 終りなきcarnaval / ◎B④ Maria