NO END SUMMER

NO END SUMMER

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芳野藤丸

2017-06-04

SHOGUN解散後のファースト・ソロにして、シティ・ポップス史に残すべき屈指の名盤。それこそ、山下達郎や角松敏生と並べてしまいたいくらいに。サウンド・クリエイターの才覚は言うに及ばず、シンガーとしても独特の男臭さ、ダンディズムを見に纏う。ホントはフロントに立っても充分絵になるが、バンドマン暮らしが長かったためか、どうも裏方に向かいがち。スペース・バンドを皮切りに、藤丸バンド〜ワン・ライン・バンド〜SHOGUN、そして本作を機に結成されたAB’S。今も続く西城秀樹のサポート・ワークも忘れられない。こうしたキャリアの基本が、まろやかなトーンでワン&オンリーのスウィング感を放つリズム・ギター。そんなところにも達郎や角松との共通項が。“優れたクリエイターはギター・カッティングに向かう”ってか。
A面をデイタイム、B面をナイトタイムに分けるのは、割とありがちなフォーマット。が、冷静なのはそこまで。小気味好く弾むビートに藤丸の粋なヴォーカルが乗る頃は、もう尻が宙へ浮いている。勿体ぶっての登場は、桑名晴子の灼けた歌声。このデュエットA①は、まさにいきなりのサドゥン・キラー。更にアーバン・ドライヴァーA②が追い打ちをかける。シフトを落としてのA④では、藤丸印のギター・ワークとAB’Sトリオ(藤丸、渡辺直樹、松下誠)の奥行きあるハーモニーが抜群の完成度。哀愁漂うB①は、ちょっぴり達郎のミディアムに通じる味がある。男が素直に音に陶酔できる類い稀な逸品。 (金澤寿和)