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ミルキー・ウェイ
SUMMERTIME LOVE SONG (79年)
Recommend Track
◎A① 夏の日の恋 / ◯A② 波 / ◯A③ サーフィン・サマー(浜辺のサンバ) / ◎A④ ハーバー・ライツ / ◯B①白い波 / ◎B② ジャマイカ・ムーン
職人による知られざる奇跡の名盤その1。それこそ全曲リコメンドしたいくらいに。映画「避暑地の恋」のテーマとしてスタンダード化したA①。ユキとヒデ(出門英 / ヒデとロザンナ)が歌っていた渡辺貞夫作のボサノヴァB①。さらにアントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲A②、ナタリー・コールの定番ラテン・グルーヴ「La Costa」をリメイクしたA③、ボズ・スギャッグスA④やニック・デカロB②(スティーブン・ビショップ作)といったAORチューンまでもが、研ぎ澄まされた日本語カヴァーとして甦る。すべてに共通するのは、ほのかなトロピカル・ブリーズとレイジーなシエスタ感覚。オリジナルもゆるいソフト・ロックや空の碧さに溶けいるメロウ・フローターに仕上がった。シルキーなコーラスはサウンドをニートに煌めかせる。オマケに浅井慎平のジャケット・フォト、ライナー代わりに片岡義男のショート・ストーリーなど、小道具も揃って。ふと気付けば、A面はside one、B面はside one [continue]の表記。きっとこれは彼らの夏への想いなのだろう。
ミルキー・ウェイは、信田かずおと松下まこと(誠)という音楽学校の師弟コンビから成る。2人ともアレンジャーやスタジオ・ミュージシャンとして活躍するだけあり、この匿名的ユニットでもサラリと持ち味を発揮。松下にとっては2年後のソロ・デビュー作「FIRST LIGHT」や、現在活動中のアカペラ・グループ Breath by Breathを率いる原点とも。83年にリイシュー盤がある。 (金澤寿和)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◎B④ サマー・タイム・ラブソング / ◯B⑤ 限りなき夏
増尾好秋
GOOD MORNING (79年)
Recommend Track
◯A① (I'M STILL) BELIEVING IN DREAMS / A② GOOD MORNING / ◯A③ BECAUSE OF YOU / ◯B④ LITTLE BIT MORE
レースのカーテン越しに射し込む、柔らかな朝の光。テーブルの向こうからは深煎りコーヒーの芳醇な香りが漂ってくる。ベッドサイドに手を伸ばし、目覚めの一服。ライターの音に気づいたのか、キッチンに立つ彼女が振り返った。髪はまだ乱れたままだし、素肌にバスローブを羽織っただけ。はにかんだ笑顔は、つい数時間前の熱いひとときを思い出させて…。そんなハッピーな朝の情景によく似合う珠玉の名盤。これほどピュアなメロディに溢れたギター・アルバムは何処にもない。 (金澤寿和)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◎B③ DEALING WITH LIFE
サディスティックス
WE ARE JUST TAKING OFF (78年)
Recommend Track
◯A④ Close Your Eyes / B③ On The Seashore
メンバー全員のリーダー作が出揃い、高中人気はウナギ昇り。幸宏もYMOへ参加し、バンド感が薄れゆく中でのセカンド。コンセプトもなく、それぞれが楽曲を持ち寄ったセッション・ライクな作りではある。でも4人の創作意欲が強い時期だけあり、聴きドコロは沢山。とりわけ高中の歌にストリングスがまつわるA④、桑名晴子のハスキー・ヴォイスが冴えるB③ (翌年彼女自身がリメイク)など、まったりメロウ系が美味しい。とはいえ彼らはこの直後にライヴを録って解散へ。 (金澤寿和)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◯A② BLUE CURACAO / ◎A③ ADIOS / ◯B① NAO / ◯B④ FLOATING ON THE WAVES
高橋幸宏
SARAVAH! (78年)
Recommend Track
A② SARAVAH!/ ◎B① ELASTIC DUMMY / ◯B③ BACK STREET MIDNIGHT QUEEN / B④ PRESENT
「VOLARE」のカヴァーがフロア・ネタとしてお馴染み、ユキヒロのテクノ前夜の初ソロ。タイトル曲A②はボサ・フレイヴァー香るミディアム・メロウの逸品。白眉は坂本龍一作のアッパーなフュージョン・ファンク・インストB①。吉田美奈子、山下達郎のブラジリアン・スキャットが宙を舞い、怒涛の演奏が地を揺るがす最高のキラー・ダンサーだ。確かなソウル・センスに貫かれたミディアム佳曲B③をはじめ、ハイ・クオリティ揃いのマテリアルに安心して身を任せて。 (波多野寛昭)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◎A③ C’EST SI BON / ◎A④ LA ROSA
加藤和彦
GARDENIA (78年)
Recommend Track
◎A① Gardenia / ◯A② Today / ◯A③ 気分を出してもう一度
時代の先を軽やかに渡り歩く粋人なイメージを纏う彼、その突然の訃報(2009年没)に、唯一無二の才を惜しむ声が多く聞かれた。このアルバムは、サディスティック・ミカ・バンド解散後にリリースした2枚目のソロ作(通算4作目)にあたる。黒を基調に、原色をまぶしたジャケット。バンド仲間だった高橋幸宏、後藤次利の信頼できるリズム陣に、鈴木茂、坂本龍一、渡辺香津美らを配したシルクの如きアンサンブル。ブラジルの色彩にうっすらヨーロピアンな香り漂う高品質の楽曲。軽味と気品に溢れる安井かずみの詞。そのすべてにおいて、彼の卓越したセンスとこだわりが満ちている。まるで末長く愛されることを約束されたアンティークのように…。
タイトル曲A①は、ゆるやかな入りからサビへの展開が堪らなくスリリング。笠井紀美子のウィスパリング・ヴォイスと次第に速度を増すブラジリアン・グルーヴがダブルで迫ってくる。加藤のアコースティック・ギターが刻んでいるさり気ないリズムも心憎い。再び笠井とのデュエットで耳をくすぐるA②は、ボサとメロウ・グルーヴが溶け合う極上品。そこにA③が、軽やかで甘いヴァイブレイションを送り込んでくる。このボサ3連発で身体は快感の渦に呑まれ、心はすっかり雲の上。このあともグルーヴィーなジャズからストレートなボサ、ラストのサンバまで様々な嗜好が用意され、我々が耳を逸らすことを許してはくれない。心地よいサウンドに酔いしれる歓喜のカーニヴァルは、いつまでも続いていく。 (波多野寛昭)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◯A⑤ Spicy Girl / ◯B③ 終りなきcarnaval / ◎B④ Maria
南佳孝
SOUTH OF THE BORDER (78年)
Recommend Track
A② プールサイド / ◯A④ 日付変更線 / ◎B① 夜間飛行 / B⑥ 週末のサンバ
シーンは夏の香りに包まれた都会。トロピカルだからといってバカンスやステイ・アイランドではなく、街に居ながらにしての仮想リゾート。アフターアワーズの儚い夢。だからこんなに愛おしく、眩いばかりに輝いて見える。夜の帳が降りているうちは、何処へでも自由に飛べた。ヒーローやヒロインになることだって難しくない。でも朝焼けの頃には、虚しさがヒタヒタと忍んでくる。けれどそれでもイイじゃないか。そこにレイジーな安らぎがあったなら、夢はまた続いていくはずだから。
細野晴臣が叩くスティール・ドラムのカリビアンな音色でスタートする第3作。これは、南の長いキャリアに於ける金字塔。前作ジャケの青さを連想する極めつけのメロウ・フローターA②、大貫妙子とのデュオで綴られるスロウ・ボサA④。ミッドテンポのサンバのリズムがスムーズに滑っていくB①。心の琴線を掻き鳴らすストリングスに導き出され、ディープ・ブルーにむせんでいくB⑥。南の楽曲がハイレベルで安定しているところに、都会人のプチ逃避感を刺激するユーミンや来生えつ子の詞が寄り添って、それを坂本龍一が才気溢れるアレンジで仕上げていく。個性的なヴォーカルも単に気取ってるワケじゃなく、男の本音や弱さをサラリと歌い込み、時には物哀しく、時にはけだるく。ティン・パン 〜 YMO系を総動員した演奏の質は言わずもがなだが、教授のシンセがマテリアルの雰囲気を一層豊かにしているのも間違いのないところ。 (金澤寿和)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◯A③ 朝焼けにダンス
濱田金吾
FALL IN LOVE (85年)
Recommend Track
A① FOOL IN THE CITY / ◯A③ シャレード / A⑤ ダイアル045 / ◎B③ 悲しきBy-Player
前作に続き、わたせせいぞうのイラストがジャケを飾った現時点での最終作。楽曲はバラエティに富むが、甘くて優しいメロディは本作でも不変で、リスナーの心をぎゅっと捕らえて離さない。ビートを効かせたA①、センシティヴなメロディラインが印象的なA③、ミステリアスなムードを持つミディアムA⑤、そして極めつけとなるのが、流れるようなシンセの音色が素敵なメロウ・チューンB③だ。現在もサウンド・クリエイターとして作曲 / プロデュースを中心に活動。新作が待たれる。 (えこりん・まつい)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◯B② Gipsy
芳野藤丸
ROMANTIC GUYS (83年)
Recommend Track
◯A① 夏の女 / ◎A② Pacific / ◯A⑤ Just A Woman / ◯B① You're The One
AB’S結成後のソロ第2弾は、約半数がロベン・フォード(g)やネイザン・イースト(b / 現フォープレイ)、ドン・グルーシン(kyd)らとのL.A.録音。セクシャルに炸裂する藤丸節A①に、男は憧れ女は濡れる。夏のシエスタを艶かしく彩るミディアムA②では、渡辺直樹のファルセット・ヴォイスも登場。テンポを落として揺れる女心を歌ったA⑤、SHOGUN時代のお気に入りをジックリ焼き直したB①、どれもL.A.での楽曲だ。“女・子供が浮かれても、男は黙って聴きなさい” (当時のコピーより)。 (金澤寿和)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◯A③ 思い出の内側で / ◯B④ AUGUST
国分友里恵
Silent Moon (90年)
Recommend Track
① Silent Moon / ◯③ Saturday Nite / ⑤ 私にだけForever / ⑦ It's A Destiny / ⑧ Moment Of Summer / ◯⑩ It's Hard To Say Good-bye 〜さよならは愛の言葉〜 / ⑪ Whisperin'
これもブギー人気による再評価に掛けるべき好作。傑作ファーストからファンキー指向を見せた友里恵嬢だが、ここでは①③⑧の作詞に吉田美奈子を迎えたり、かつて角松敏生とデュエットした名バラード⑩を羽場仁志と歌っている。①や⑦は、ジミー・ジャム&テリー・ルイス路線を取り込んだヒューマン&プログラミングによるアーバン・ファンクで、彼女の歌もド迫力。それより彼女らしいのは、③⑤みたいな少し軽めのダンス・チューン。サウンド・プロデュースは後の夫:岩本正樹。 (金澤寿和)
& 【NO END SUMMER’S CHOICE】
◎⑥ I Love You
EPO
HARMONY (85年)
Recommend Track
◯A① 夕闇のストラット / B① 私について / B② 上海エトランゼ / ◎B⑤ ハーモニー
アレンジはもとより主要な楽器のほぼ全てを清水信之が担当した通算7作目。小粋なシンセベースとフルートに誘われて、思わずスキップしながら家路を急ぎたくなる◯A①「夕闇のストラット」、一瞬DOWN TOWNがチラつくポップなB①「私について」はオルガンが良いアクセントに。タイトル通り異国情緒感溢れるB②「上海エトランゼ」。そして安部恭弘とのコーラスも相性抜群な◎B⑤「ハーモニー」の美しさには、夕暮れ時の海沿いで感じた【終わらない夏】を思い出さずにはいられない。 今年の夏は、湘南にでも行こうか… 。(デンゼル)